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技術士筆記対策:建設-必須科目Ⅰの過去問分析とR5出題テーマ想定

筆記試験

建設部門必須科目Ⅰの過去4年の出題傾向を分析し、その結果から今年度の出題テーマを想定します。想定問題も2問作成したので受験対策の参考にしてください。

 

問題文の構成は昨年までと同じ

必須科目Ⅰの問題文は、過去4年間のいずれも前文と(1)~(4)の4設問で構成されています。この問題文構成は、今年も変わらないと思います。

前文には、日本の社会情勢と社会ニーズが書かれており、前文の内容を踏まえて設問に解答することが求められます。

設問(1)には、課題抽出のテーマや解答条件が書かれています。解答条件としては、R3,R4と同様に、技術者の立場で多面的な観点から3つ課題を抽出すること、観点を明記した上で課題の内容を示すことの2つが与えられると思います。

設問(2)では、抽出した3課題から最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題への複数の解決策を示すことが問われます。これまでは、解決策の提示数は指定されていませんが、今年は他部門のように3つ挙げるよう指定される可能性も否定できません。

設問(3)では、解決策を実行して新たに生じうるリスクの対応策、または解決策を実行して生じる波及効果と懸念事項への対応策が問われます。問われ方が2パターンありますが、リスクと懸念事項は同じことで、どちらも負の波及効果から派生するものです。

設問(4)では、設問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要点・留意点が問われます。今年3月に技術者倫理要綱が改定されていますが、公衆の安全・健康・福利の優先、持続可能な社会の実現への要点・要件を問われることに変わりはありません。

 

過去4年分の出題傾向を分析

出題テーマとは、問題を解決して良い状況にする目標のことで、過去4年間の問題ではいずれも設問(1)の「技術者として・・・」の前に書かれています。今年も例年通り設問(1)の前半に着目すれば、簡単に見つけられるはずです。

出題テーマは、課題を抽出するための目標ですから、前文の社会情勢や社会ニーズに深く関連してきます。過去3年間で出題された必須科目Ⅰの過去8問について、社会情勢、社会ニーズ、出題テーマを一覧表にすると次のようになります。

社会情勢としては、過去8問のうち人口減少が2回、自然災害が2回、老朽化1回、地球環境2回、デジタル対応1回が出題されています。社会情勢には、日本にとって都合の悪い状況が書かれています。
社会ニーズとしては、各問題で言い回しは違いますが、いずれも持続可能な社会構築を挙げています。社会ニーズは、不都合な状況下にある日本の課題と捉えても良いでしょう。

出題テーマは、社会ニーズを達成するために、建設部門が実現すべき目標です。過去8問の出題テーマは、すべて違っています。社会情勢や社会ニーズが同じでも、出題テーマを毎回変えていることから、おそらく今年も過去問とは違うテーマが出題されると考えられます。

 

不都合な社会情勢に関連する未出題テーマを想定

今年度の問題文も例年通り、前文には、日本にとって不都合な社会情勢と持続可能な社会構築がニーズとして示されるはずです。そのうえで設問(1)において、建設部門の果たすべき目標が課題抽出のテーマとして出題されるでしょう。

今年の出題テーマも、現状の不都合な社会情勢に深く関連する内容になるはずです。不都合な社会情勢としては、過去問に出題された人口減少・自然災害・老朽化・地球環境・デジタル対応を考えておくべきです。そして、今年の出題テーマは、それらの社会情勢に関連するテーマのうち、過去に未出題のテーマになる可能性が高いと考えます。

人口減少では、生産性向上と担い手確保が出題済みなので、それ以外の技術継承や地方創成などのテーマが想定されます。

自然災害では、安全安心の確保と風水害の防止削減が出題済みなので、それ以外の国土強靭化や大規模地震対応などのテーマが想定されます。

老朽化では、出題済みの戦略メンテナンス以外に、自治体新技術導入や広域群管理などのテーマが想定されます。

地球環境では、循環型社会とCO2削減吸収が出題済みなので、それ以外に自然共生社会や省エネ・再エネ拡大などのテーマが想定されます。

デジタル対応では、出題済みのDX推進以外に、防災デジタル化やビッグデータ活用などのテーマが想定されます。

 

インフラ広域群管理をテーマとした想定問題

インフラ広域群管理は、社整審技術部会の社会資本メンテナンス戦略小委員会の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」(R4.12)において提言された施策です。

人員・予算が不足する小規模自治体では、老朽化インフラの補修・修繕が進まず、重大事故や致命的損傷の発生リスクが高まっています。そのため、広域エリア内の複数の自治体が管理するインフラを群と捉えてメンテナンスを進めようとするものです。

今後は、エリアや管理体制の設定、施設の統廃合や自治体への新技術導入など、課題は多々ありますが、老朽化が急速に進む状況を踏まえると早急に進めるべき重要課題と言えます。

このような考えから、インフラ広域群管理をテーマとした想定問題を次のように作成してみました。

【R5必須科目想定問題1】
Ⅰ-1 中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故から10年が経過し、これまでインフラのメンテナンスサイクルの確立やインフラメンテナンスの効率化・高度化など様々な取組を進めてきた。しかし、多くのインフラを維持管理する地方公共団体のうち、特に小規模な市区町村では、現在でも老朽化が著しい施設が多数存在し、それらの補修・修繕が十分に進んでいない状況となっている。
 こうした状況の中、毎年繰り返される自然災害を通じて、インフラが機能することの重要性を国民が認識してきており、今後ともインフラが十分にその機能を果たせるよう総力戦で取り組んでいくことが求められている。
(1)広域にわたる地域インフラのメンテナンスを実施するために、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対応策について述べよ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。

 

防災デジタル化をテーマとした想定問題

防災デジタル化も、現代社会の重要課題と考えます。「国土強靭化計画2022」(R4.6)では、「AI戦略2022」(R4.4)を踏また防災デジタルツインの構築検討、防災データプラットフォーム・防災IoTの構築推進など、防災デジタル化の高度化を挙げています。

また、R5年度から開始する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期」では、デジタルツインによる情報収集・把握の高度化と個人・自治体・企業による災害対応力強化に向けたスマート防災ネットワークの構築が示されています。

大規模災害リスクの高い日本では、人口減少が続く状況において、レジリエントで安全・安心な社会をどのように実現していくかは非常に難しい問題です。

このような考えから、防災デジタル化をテーマとした想定問題を次のように作成してみました。

【R5必須科目想定問題Ⅰ-2】
Ⅰ―2 我が国では、気候変動の影響により気象災害が激甚化・頻発化するとともに、南海トラフ地震や首都直下地震等の巨大地震の発生が切迫している。大規模な自然災害から国民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持するためには、防災・減災、国土強靱化の取組を加速化し高度化させる必要がある。
 取組みの加速化・高度化には、インフラ分野のデジタル化・スマート化が不可欠であることを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)デジタル技術を活用して防災・減災、国土強靱化の取組を実現するに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行して生じる波及効果と専門技術を踏まえた懸念事項への対応策について述べよ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要点・留意点を述べよ。

 

A判定答案の作成に向けたアドバイス

必須科目Ⅰでは、現代社会が抱える複合的な問題の解決能力と課題遂行能力を確認されます。現代社会が抱える複合的な問題とは、国民生活・社会経済の持続性が確保できなくなる問題だと捉えることもできます。出題テーマのメンテナンスやデジタル化は、そのための手段だと考えれば良いでしょう。

解答で問題解決能力を見せるには、問題要因を分析して課題を抽出すること、社会環境への影響度を示して最重要課題を選定すること、リスク低減効果を示して解決策を提示することが重要です。コンピテンシーを採点する試験なので、どんなに立派な解決策を示しても、「問題解決」に示すプロセスを経ていなければ減点になります。

そして課題遂行能力を見せるためには、問題要因、社会環境への影響度、解決策の有効性に対する自分なりの評価を示すことが重要です。国交省の施策をそのまま書いたとしても、それを自分なりにどう評価しているかが伝わらなければ、A判定をとるのは難しくなります。

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