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複合的な問題の意味

 

技術士第二次試験は、複合的な問題の解決に必要な資質能力(コンピテンシー)を確認する試験です。複合的な問題の意味を正しく理解することは、第二次試験の合格はもちろんのこと、技術士として業務を行うためにも絶対に必要です。

技術士試験で確認されるコンピテンシーは、IEA-GA&PC(国際エンジニアリング連合の卒業生としての知識・能力と専門職としての知識・能力)をベースに設定したものです。そのIEA-GA&PC(ver3.2013)では、複合的な問題を次のように定義しています。

<複合的な問題の定義ーIEA-GA&PC(ver3.2013)->
定義:当該専門分野のエンジニアリング基礎、専門知識、エンジニアリング・デザイン、エンジニアリング業務実践、研究文献のうち一つ以上、そして基本に帰り原理に立った分析アプローチできるレベルの高度な知識を有し、以下の特性のいくつか又は全てを含む問題
要求事項相互間の矛盾の程度:広範囲な又は相対立する、テクニカルな問題、エンジニアリング問題、及び他の問題を含んでいる
求められる分析の深さ:明白な解決策がなく、適切なモデルを考案するための解析に、抽象的思考と独創性が求められる
問題に対する熟知度:めったには直面しない問題を含んでいる
基準適用の可能性:専門領域の基準や規範で達成できる問題の範囲を超えている
利害関係者の関与範囲と、それぞれの要求の合判度合:広く異なる要求を有する多様な利害関係者の集団を含む
結果:様々な面で重大な結果をもたらす
相互依存性:多くの構成要素又は下位の問題を含む高度な問題である
判断:意思決定に当たり判断力を要する

IEA-GA&PCの定義のままでは、難しい言葉が並んでいるため、なかなか理解し難いと思います。そのため、onowithでは、多くの技術者が理解しやすいように、EA-GA&PC(ver3.2013)を独自に解釈して技術士の受験指導を行っています。

 
複合的な問題の定義と特性の解釈(onowith)
定義:専門的な要因分析・リスク分析が必要で特性1~8を複数含む問題
特性1:トレードオフ関係の要求事項が含まれる
特性2:解決策が複数ある、有効性が変化する
特性3:類似事例や研究事例が無い
特性4:マニュアルが無い又は適用できない
特性5:利害関係者の調整が必要
特性6:判断ミスが重大な欠陥・事故につながる
特性7:組織・資源のマネジメントが必要
特性8:公衆、社会、環境への影響判断が必要

定義と特性の解説

定義にある要因分析・リスク分析が必要な問題とは、専門的な知識を要し、基本原理を理解した上で分析しなければ、有効な解決策が導き出せない問題のことです。分析は難しい数値計算を伴う定量分析ばかりではなく、知識と経験を踏まえて多角的に考察する定性分析も含まれます。データを見ながら頭の中で問題の発生原因を探ることも、専門的な要因分析にあたります。

特性1のトレードオフとは、複数条件を同時に満足できない状態です。安全性と経済性、用地造成と環境保全など、建設分野でのトレードオフ問題はたくさんあります。業務マネジメントでは、日常的に品質・コスト・納期のトレードオフ問題に遭遇しているはずです。

特性2の解決策が複数あるとは、対策工法を比較検討して決めるなど、解決策がいくつか考えられる問題のことです。有効性が変化するとは、環境対策や防災対策などのように、対策実施後すぐに有効性が確認できず、時間の経過に伴い有効性が失われる問題のことです。

特性3の類似事例や研究事例が無いとは、参考となるサンプル事例が無く、自分で解決策を合理的に見つけ出すしかない問題です。合理的に見つけるためには、ある程度の知識と経験が必要になります。

特性4のマニュアルが無い問題とは、解決手順や判断基準が定められていない問題のことです。また、既存のマニュアルが制約条件等からそのまま適用できない場合も、この特性に含まれると考えられます。

特性5の利害関係者の調整は、発注者・設計者・施工者はもちろん、元請・下請け、上司・部下・外注先など、通常業務でも頻繁に行われているはずです。関係者の利害調整には、コミュニケーション力やマネジメント力が必要になります。また、関係者の利害を調整するには、強いリーダーシップも必要になります。

特性6の重大な欠陥・事故とは、斜面の崩壊、河川の氾濫、交通事故など、公衆の安全を脅かす事象をイメージすれば良いでしょう。建設分野の業務であれば、設計ミスや施工ミスが、公衆の安全に直結するはずです。

特性7の組織・資源のマネジメントが必要とは、1人では解決できない問題のことです。設計業務や施工現場には、複数のスタッフや資機材が必要になります。どんな業務もインプットデータが必要になるので、データ活用や処理方法の資源マネジメントは必ず行っているはずです。

特性8の公衆、社会、環境への影響判断が必要とは、業務成果の使用者への影響のみならず、第三者への影響、将来にわたる社会経済への影響、地球環境への影響を判断する必要があるということです。影響とは、業務成果がもたらす負の波及効果、リスクと考えておけば良いでしょう。

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