模擬面接試験官の経験から、口頭試験で不合格となる3大原因と対策の基本をまとめてみました。この記事は、2017年の投稿を現在の試験制度に合わせて書き直したものですが、内容的に大きく変わってはいません。試験制度が変わっても、口頭試験の不合格原因は変わらないということです。
口頭試験で絶対に不合格となる3大原因
模擬面接の試験官をしていると、「このままでは絶対に不合格です」と自信を持って言えるときがあります。それは、次のいずれかに該当する場合です。
- 技術士にふさわしい実務経験を確認できない
- 専門技術と業務経歴が違う
- 公益確保を優先しようとしない
この中で最も多いのは、1番目の「術士にふさわしい業務経験を確認できない」場合です。確認は、実務経験証明書の業務内容の詳細を基に行います。読んで確認できなくても、口頭説明を聞いて確認できれば合格です。確認時間は10分程度と短く、時間内に確認できなければ不合格となります。端的に「技術士にふさわしい」を説明することが、合否のカギになります。
2番目の「専門技術と業務経歴が違う」と判断された場合は、不合格は間違いないでしょう。しかし、説明の仕方次第では、理解してもらえることも多いので、あきらめない方が良いです。模擬面接で「専門が違うので合格は無理」と判断された人も、対策を練り面接の練習をくり返したことで合格した事例もあります。
3番目は公益確保を優先すれば良いだけなので、簡単なアドバイスで改善できます。これで不合格にされるのは、極めてもったいないです。
伝える気持ちを持って会話する
実務経験証明書は提出済みなので、今さら変更はできません。業務内容の詳細を読んだだけで技術士にふさわしいことが、伝わっているとは限りません。しかし、それが伝わっていない場合、口頭試験では必ず説明するチャンスが与えられます。
説明できる時間は、5分~10分と短いです。その短い時間の中で、私は技術士にふさわしい業務とは何かを理解していて、詳述業務はそれを実際に体験した内容であることを伝えるのです。試験官も、それを伝えて欲しいのです。
口頭試験では、伝える気持ちをもって会話すれば、きっと上手くいくはずです。会話をすれば、試験官が聞きたいこと、受験者が伝えたいことを、お互いに確認しあえるようになります。そして、求めた答えが返ってくると、試験官はうなずいてくれるはずです。
業務内容の詳細が技術士にふさわしいと確認できない理由
業務内容の詳細が技術士にふさわしいと確認できない理由は、大きく3つに分けることができます。
- 業務上の立場・役割が不明確
- 問題解決ストーリーが不明確
- 受験者本人の業績と言い難い
ただし、始めから「技術士にふさわしくない」と断言できる人は、極めてまれです。ほとんどは、業務内容の詳細の書き方や説明が下手で、技術士にふさわしいことが理解されない人たちです。時間をかけてじっくり話を聞き、「こういうことだよね」と問いただせば、技術士にふさわしいことが理解できるケースがほとんどです。
短時間で「技術士にふさわしい」を理解させることができれば、不合格になる確率はぐっと低くなるはずです。
口頭試験は、落とそうとしているのではなく、合格させようという姿勢で質問してきます。業務内容の詳細に関しては、「業務上の立場・役割、問題解決ストーリー、本人の業績」を確認したいだけなのです。
しかし、制限時間内にそれが確認できなければ、不合格にせざるを得ません。ですから、制限時間内に理解してもらえるように、しっかり準備をして臨むことが重要になります。
「技術士にふさわしい」=「複合的問題を解決した」と認識する
「この業務のどこが技術士にふさわしいのか」との質問に、あなたは端的に答えられますか?
口頭試験で確認される「技術士にふさわしい業務」とは、「複合的問題を解決した業務」のことです。試験官が質問しているのは、「この業務の問題・課題は何で、それをどのように解決したか」ということです。同時に、技術士の役割に対する認識も確認しています。
技術士には、複合的なエンジニアリング問題を技術的に解決する役割があります。
「この業務のどこが技術士にふさわしいのか」、この質問に答えられなければ、あなたは技術士の役割を認識しておらず、問題解決能力を発揮した経験が足りないと判断されて不合格になります。逆に、端的に答えることができれば、コンピテンシーが技術士レベルに達していると判断され、合格できるはずです。
複合的問題とは、コンピテンシーの「問題解決」で示す手順を踏まなければ解決できない問題のことです。すなわち、問題解決に当っては次の3つの手順を踏む必要がある問題のことです。
- 問題の要因や制約要因を分析して評価する
- 相反する要求事項による影響度を評価する
- 複数の選択肢を比較して有効性を評価する
口頭試験では、問題解決能力・課題遂行能力を筆記試験の答案と経験業務から確認することになっています。筆記試験が合格レベルに達していれば、上記の手順を踏まえた実務経験の有無を確認するために、業務内容の詳細に関してコンピテンシー「評価、マネジメント」の質問が多くなります。
技術的課題を解決する立場だったことを伝える
「技術士にふさわしい立場」とは、「技術的課題を解決する立場」のことです。役職ではありません。
部長の指示で仕事をする末端の技術員でもいいのです。与えられた仕事に課題を見つけて、それを解決し、最適な解決策を部長に提示したのなら、あなたは課題解決する立場、すなわち技術士にふさわしい立場だったと言えます。
ちなみに、仕事を指示しただけの部長は、技術士にふさわしい立場とはいえません。なぜなら、部長は技術的課題を自らの能力で解決していないからです。役職が部長などの管理職の場合は、技術的課題を解決する立場ではないと思われがちです。
「普段どのような立場で仕事をしていますか?」の質問に、「部長です」「技術員です」と、組織上の役職を伝えるより、「○○に関する技術的な課題を解決する立場です」とはっきり伝える方が、試験官は評価しやすいはずです。
問題解決ストーリーを見えるように説明する
模擬面接で最も多い指摘は、「問題解決ストーリーが見えない」ということです。試験官は、問題解決ストーリーが分からないと、問題解決能力が有るのか無いのか判断がつきません。そして、判断つかないまま合格にはできないのです。ですから、不合格にならないためには、少なくとも問題解決ストーリーを見せる必要があります。
業務内容の詳細について、以下の3つのストーリーから説明できれば、問題解決ストーリーが見えやすくなります。あなたの業務も、いずれかのパターンに当てはめることができると思います。そんなつもりで書いていなくても、あなたがそれに気づいていないだけかもしれません。
- 普通の方法に問題点を見つけて、工夫・改善して合理的に解決した
- 確立された手法が無いので、他の手法を応用して合理的に解決した
- 要求事項がトレードオフであり、リスク分析して合理的に解決した
試験官との会話が成り立つように練習する
伝えるべきことは、先にも書いたように「1.立場と役割、2.問題解決ストーリー、3.自分の業績」の3つです。試験官は業務内容の詳細をしっかり読んでいます。「立場と役割はなんとなく分かったから、問題解決ストーリーを教えて欲しい」と思って質問しているのに、立場や役割の説明ばかりでは、会話が成立しません。
口頭試験を終えて不安な点を聞くと、「試験官の質問と回答がかみ合わなかったこと」を挙げる人が多くいます。実際の口頭試験では、問答集などに書かれているような、明快な質問ばかりではありません。
難しいことですが、試験官が聞きたいことを理解して、的確に答えるということです。すぐにはできないかもしれませんが、模擬面接を受けて練習すれば、きっとできるようになります。何度も練習することが重要です。
今は未熟でも、熱く夢を語る者には期待する
口頭試験だからといって、いまさら高度な技術力を身に付けることはできません。でも、筆記試験を通ってきたのですから、技術士に相当する知識や能力は、概ね認められています。口頭試験では、今後あなたが技術士の役割を担っていけるかを確かめます。
試験官も人間なので、暗記したことを下向いてボソボソ言う人より、試験官の目を見て自分の考えを熱く語る人の方が、将来性を感じるはずです。もし、あなたが試験官なら、きっとそう思うはずです。
自分の実力に自信が無くても、熱く夢を語れるようにだけはしておくべきです。私の技術で人々を幸せにしたい。こんな技術を開発したい。独立したい。海外で仕事をしたいなど、何でもいいので夢を語れるようにしておきましょう。そのために、妥協することなく、常に努力していく決意を語りましょう。
「まだまだ未熟だけど、この人なら技術士として成長していけるだろう」
そう思ってもらえるように、熱意と情熱を持って受け答えすれば、きっと良い結果を得られるはずです。

