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【19年度技術士試験】業務経歴票におけるコンピテンシーの見せ方

受験申込

新制度試験はコンピテンシー評価方式となるため、口頭試験資料の業務経歴票でもコンピテンシーを見せておく必要があります。業務経歴票でコンピテンシーを見せるには、複合的な問題の解決過程における思考プロセスを見せることが重要になります。

 

新制度における二次試験の目的

新制度における二次試験の目的は「今後の第二次試験の在り方について」(H28年12月、科学技術・学術審議会技術士分科会)で次のように示されています。これはIEA-PCをベースに設定されたものです。

 

<二次試験の目的 -今後の第二次試験の在り方についてより->

複合的なエンジニアリング問題を技術的に解決することが求められる技術者が、問題の本質を明確にし、調査・分析することによってその解決策を導出し遂行できる能力を確認することを目的とする。

 

今回の制度改訂で技術士法自体は変わっていません。そのため、技術士法第2条の技術士定義や第6条の二次試験目的を根拠に、従来通り業務経歴票に専門的応用能力を発揮した業務を書くよう指導されることもあるでしょう。

しかし、試験制度は変わったのですから、「専門的応用能力=複合的な問題の解決能力」と捉えて、業務経歴票には「複合的な問題を解決した業務」を挙げる必要があるでしょう。そうしなければ、IEA- PCをベースに設定したコンピテンシーでの判定もできなくなるのです。

 

業務経歴票の出来が合否に及ぼす影響

口頭試験の内容は以下のように公表されていて、業務経歴票は「Ⅰ技術士としての実務能力」の試問で使われます。

この試問に使われる時間は概ね10分程度で、この短い時間でコミュニケーション、リーダーシップ、評価、マネジメントの4つのコンピテンシーから合否を判定することになります。

つまり、業務経歴票は10分間で4つのコンピテンシーを確認できる内容にしておかなければ不合格の可能性が十分あるということです。内容もさることながら、業務経歴票に書いていないことは口頭で説明を求められるので、上手く説明できないなら時間切れアウトの可能性もあります。

 

業務経歴票に記載が求められる4つの必須項目

「今後の技術士制度のあり方について」(H28年12月、科学技術・学術審議会技術士分科会)の中で業務経歴票に求める記載内容が次のように定められています。

<今後の技術士制度の在り方について-抜粋->

【1)受験申込み時】

・受験申込者について、以下を記載した「業務経歴票」の提出を求める。

(これまでに従事した業務の内容、業務を進める上での問題や課題、技術的な提案や成果、評価及び今後の展望など)

※なお、業務経歴票は口頭試験における試問の際の参考にする。

口頭試験では業務詳細についての試問が主体になるので、業務詳細には①業務の内容、②問題や課題、③提案や成果、④評価や展望の4点を書いておく必要があるでしょう。なお、従来の業務詳細は「当該業務での立場、役割、成果等」だったので、④の評価や展望を書くことが新たな業務経歴票ではポイントかもしれません。

 

IEAの定義に合わた複合的な問題の捉え方

新制度試験のキーワードとも言える「複合的な問題」ですが、その意味は曖昧でとてもわかり難いのが現状です。

受験対策本や受験セミナーなどでわかりやすく解説がされるかもしれませんが、私的にはIEAの複合的な問題の定義をそのまま捉えるのが一番良いと考えています。IEAでは、8つの特性が複数含まれる問題を複合的な問題と定義しているので、8つの特性さえ把握できれば容易に理解できます。ですがIEAの翻訳版は、アカデミックな表現が並び、とても難解です。

そこで、私なりに平易な言葉で置き換えて以下のように解釈してみました。

複合的な問題に含まれる8つの特性

特性1: 要求性能・検討事項がトレードオフ関係
特性2: 解決策が複数ある、有効性が変化する
特性3: 専門的な原因分析・リスク分析が必要
特性4: 類似事例や研究事例が無い
特性5: マニュアルが無い又は適用できない
特性6: 利害関係者の調整が必要
特性7: 判断ミスが重大な欠陥・事故につながる
特性8: 組織・プロジェクトのマネジメントが必要

ここに挙げた8つの特性が2つ以上含まれた問題を解決したなら、それは複合的な問題を解決した業務ということになります。これまでの業務体験の中に上記の特性が含まれていないか、改めて振り返ってみてください。

特性1のトレードオフや特性7の重大な欠陥・事故は、建設部門の業務ならたくさん見つかると思います。そして、トレードオフを解決したり、欠陥・事故が発生しないように対策を検討したのであれば、他の特性も必ず組み合わさると思います。

 

業務詳細では問題解決の思考プロセスを伝えることが重要

技術士にふさわしい業務に見せるため、業務詳細にたくさんの要求事項、難しい分析手法の使用、最新工法を用いた解決策などを書き並べたくなるかもしれません。

しかし、試験官が確認したいのはそのような内容ではなく、あなたが普段どのような考えで問題を捉えて解決しているかです。

あなたの思考プロセスが技術士にふさわしいものなら、今後さらに難しい複合的な問題に直面しても、きっと同じような思考プロセスで解決できるだろうと判断してくれます。

思考プロセスを見せることは、あなたのコンピテンシーを見せることでもあるのです。難しいことをやりましただけでは、思考プロセスは見えないので、コンピテンシーの評価は低くならざるを得ないと理解しておきましょう。

思考プロセスを見せるには、どの業務業務プロセスでどのように考えたかを見せる必要があります。すなわち、業務プロセスを書く必要があるということです。業務プロセスとは、問題解決の手順でもありますが、建設部門の業務詳細では一般的に次の7ステップで考えれば良いでしょう。

業務プロセス(問題解決手順)

①目標設定→②現状把握→③問題分析→④課題設定→⑤対策立案→⑥対策実施→⑦結果評価

重要なことは、問題解決をどの順番で行ったかではなく、どのような思考プロセスで問題解決をしたかです。ですから「○○を解決策とした」ではなく、「△△と考えて○○を解決策とした」とか「施工性と経済性を比較し経済的に有利な○○を解決策とした」など、解決策を決めるに至った思考プロセスを書く必要があります。

 

業務詳細のタイトル構成と思考プロセスの見せ方

業務詳細の構成は、経歴票で記載が求められる必須4項目(業務の内容、問題・課題、提案・成果、評価・展望)をタイトルとして、業務プロセスの7ステップを各タイトルに配置するようにします。そして、本文内容に思考プロセスを入れるようにすると良いでしょう。

以下の表のよう構成とすれば、試験官もコンピテンシーが評価しやすくなると思います。

 

業務経歴票の評価対象コンピテンシーの意味とポイント

コミュニケーション

全ての業務プロセスで、発注者、上司・スタッフなどの関係者と常に意思疎通を図りながら、業務を進める必要があります。業務詳細では、関係者とのリスクコミュニケーションにより、問題が解決されたことが伝われば、高評価につながると思います。コミュニケーションは、業務詳細の文章力、口頭試験でのプレゼン力で評価されるものでないことを理解しておきましょう。

 

リーダーシップ

リーダーシップで重要なことは、「明確なデザインと現場感覚」です。明確なデザイン感覚は、ぶれない業務コンセプトのようなもので、関係者の顔色を伺いながら事を進めるのではなく、常に目標を見失わず利害関係者の調整を図っていくということです。また、現場感覚は、自分の理想を押し付けるのではなく、状況に応じてスタッフの能力を最大限に発揮させるということです。

 

評価

評価は、業務プロセスの各段階や最終結果に対して行うものです。問題分析、対策立案、結果評価に対してどのような評価を行ったかは、口頭試験で必ず確認されると考えておくべきです。解決策の評価では、メリットばかりではなく、解決策に潜在するリスクと環境変化に応じた改善の必要性まで言及しなければ、高評価は得られません。業務プロセス各段階での評価結果によって、マネジメント(資源配分)が変わってくるはずです。口頭試験では、評価に対する質問に上手く答えられないと厳しい結果になるかもしれません。

 

マネジメント

マネジメントとは業務目的達成のために人員・資機材・予算・情報をどのように管理し、有効に配分したかということで、全てのプロセスに必要です。人員や予算配分では、利害関係者とのコミュニケーションや調整が必要ですし、評価結果の反映の仕方で成果品質も変わります。このように、マネジメントは他のコンピテンシーと関連して評価されると考えられます。

 

まとめ

新制度における業務経経歴票では、専門的応用能力を発揮した業務というより、複合的な問題を解決した業務を意識して書くことが必要です。

業務経歴票の出来が最終的な合否に大きく影響します。業務経歴票を基に判定されるコンピテンシーを業務詳細で見せることが重要です。

業務詳細には、①業務の内容、②問題・課題、③提案・成果、④評価・展望の4つの必須項目を書かなければいけません。

複合的な問題は、IEAの定義にある8つの特性を2つ以上含む問題と捉えること見つけやすくなります。そう捉えることで、問題解決プロセスとコンピテンシーの整合も図れます。

業務詳細では、難しい手法や最新工法を使った実績ではなく、問題解決過程おける思考プロセスを見せることが重要です。

業務詳細の構成は、必須4項目をタイトルとし、業務プロセスの7ステップと思考プロセスを各タイトルに配置するようにします。これにより、コンピテンシーが判定しやすくなります。

業務経歴票で判定されるコンピテンシー(コミュニケーション、リーダーシップ、評価。マネジメント)の意味と業務プロセスとの関係をしっかり理解しておきましょう。

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