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技術士筆記試験で想定外のテーマでも簡単に課題が抽出できる方法

筆記試験

必須科目Ⅰと選択科目Ⅲでは、想定したテーマの課題と解決策の解答を暗記して受験に臨む人は多いと思います。それで上手くいく場合もありますが、想定外のテーマが出題された場合は、その場で課題を抽出しなければなりません。その場での対応は、時間手も限られるのでかなり難しいはずです。今回は、どんなテーマが出題されても、本番で簡単に多面的観点からの課題を抽出できる方法を紹介します。

 

課題抽出に必要な予備知識

多面的観点からの課題抽出の意味を知る

多面的観点からの課題抽出とは、複数の違う側面から現状の問題点を分析し、各側面における対応方針を絞り出すということです。
課題の抽出が問われているのですから、平成時代の試験のように課題を挙げて説明するだけでは評価されません。
多面的観点としては、基本的には「ヒト・モノ・カネ・基準・仕組・情報・時間・場所・環境」などがあります。
出題テーマによっては、設計・施工・維持などのプロセス別、防災・減災・免災などのリスク別、平常時・発災時・復旧後のフェーズ別に課題を抽出する方が簡単な場合もあります。

コンピテンシーから問題・問題点・課題を捉える

技術士試験は、複合的なエンジニアリング問題の解決に必要なコンピテンシーを設定し、その有無を採点して合否が決まります。
必須科目Ⅰと選択科目Ⅲの採点では、コンピテンシー「問題解決」の配点ウェイトが大きく、設問(1)(2)の解答内容が採点対象となります。
問題・問題点・課題も、コンピテンシーの定義を踏まえて、「問題とは複合的な問題」、「問題点とは問題発生要因」、「課題とは発生要因の削減方針」と捉えることができます。
つまり、課題の抽出とは、複合的な問題の発生要因を分析して、発生要因の削減方針を設定することだと理解できます。

問題文から多面的観点の着目ワードを見つける

問題文の前文には、現状の問題点や国民のニーズを表すワードが並んでいます。これらのワードは、いくつかの側面に分けて観ることができます。
巨大地震というワードは、被害(ヒト・モノ・カネ)の側面、発生場所の側面、発生時間の側面などに分けて観ることができます。
インフラ老朽化というワードは、老朽化施設の情報、老朽化が進む環境、ライフサイクルの時間などに分けて観ることができます。
着目ワードは多面的観点を設定するヒントであり、着目ワードを見つけることで、時間をかけずに多面的観点からの課題抽出ができるようになります。

 

問題文を開いてから課題抽出までのプロセス

設問(1)から出題テーマを見つける

必須科目Ⅰや選択科目Ⅲの出題テーマは、設問(1)の前半に書かれています。このことは、技術士会HPに掲載されている過去問から確認することができます。
R3必須科目Ⅰの出題テーマは、Ⅰ-1なら「循環型社会の構築の実現」であり、Ⅰ-2なら「風水害による被害の防止又は削減」です。
R3土質基礎Ⅲの出題テーマは、Ⅲ-1なら「環境問題に対応した新技術の開発・導入の推進」、Ⅲ-2なら「地盤構造物の災害リスクを踏まえた維持管理」です。
出題テーマは、このような端的な表記ではなく、いくつかの修飾語を付けて書かれています。修飾語に惑わされると、出題テーマを見失うこともあるので注意が必要です。

出題テーマと逆の悪い状況を考える

出題テーマは、実現する、防止するなどの良い状況にすることが書かれています。解決が問われている複合的な問題は、その逆の悪い状況のことです。
R3必須科目Ⅰ-1なら、出題テーマの逆の「循環型社会が構築できていない」状況が、解決すべき複合的な問題になります。
R3必須科目Ⅰ-2なら、出題テーマの逆の「風水害による被害が防止・削減できていない」状況が、解決すべき複合的な問題です。
このように、出題テーマから複合的な問題は簡単に見つけられます。複合的な問題が把握できれば、その発生要因を分析するとこで課題が設定できるようになります。

前文の着目ワードから3つの観点を設定する

問題文の前文を読んで、特定した複合的な問題の発生要因につながりそうな着目ワードを3つ選びます。
例えば、R3必須化科目Ⅰ-1の前文なら、「インフラ・設備・建築物」、「ライフサイクル」、「廃棄物」の3つのワードに着目します。
そうすると、これらのワードをヒントに、廃棄物になるモノ、サイクルする仕組、廃棄物の発生時間・場所から発想して、建設資材、循環システム、廃棄物発生原因の3つの観点が設定できます。
このような着目ワードをヒントにして3つの観点を設定するやり方は、過去問を使って少し訓練すれば必ずできるようになります。

3つの観点から複合的な問題の要因を分析する

設定した3つの観点を設定したら、次は複合的な問題の発生要因を分析します。R3必須科目Ⅰ-1であれば、循環型社会が構築できない要因を次のように分析できます。
建設資材の観点からは、一部の建設資材のリサイクルは進んでいるが、多くの建設産業の現場では、利益や効率化を優先して3Rが進み難いためと分析できます。
循環システムの観点からは、建設分野は計画・設計・施工・維持・更新の生産プロセスが分離しており、一連の循環システムが機能し難い産業構造であるため分析できます。
廃棄物発生原因の観点からは、大規模災害時には被災地域から災害廃棄物が大量発生し、豪雨災害では災害ゴミや流木が山間部から海洋へ流出するためと分析できます。

発生要因の削減方針をワンフレーズにして課題とする

悪い状況を良くするためには、3つの観点で分析した発生要因を削減しなければなりません。その発生要因の削減方針が、設問(1)で問われている抽出課題です。
R3必須科目Ⅰ-1の要因分析の例で言えば、発生要因を削減するためには、3Rを優先しやすくする、機能しやすい産業構造にする、発生や流出を抑えることが必要です。
これらの要因削減に向けた方針をワンフレーズにすると、建設事業での3Rの動機付け、循環システムが機能する産業構造への転換、災害廃棄物の処理システムの構築の3課題が抽出できます。
設問(1)に対しては、これらのワンフレーズを見出しとして、要因分析の観点や分析内容を本文で説明します。そうすると、多面的な課題抽出が認められる解答を書くことができます。

 

おわりに

筆記試験後、想定外のテーマに手も足も出なかった話をよく耳にします。多くの人が、出題テーマを想定し、解答案を暗記して試験に臨んでいるのだと思います。
暗記型の受験対策は、課題と解決策を問われた平成時代の試験では有効だったかもしれません。しかし、令和時代は問題解決プロセスが問われるので、暗記型対策の有効性が低くなっています。
私なりに令和時代の試験対策を追求し続けた結果、問題解決の重要ポイントである多面的観点からの課題抽出では、今回紹介した方法が現時点で最も有効だと考えています。
この方法は、コンピテンシーの定義に沿って問題解決プロセスを答えるだけですから、各自の知識レベルの範囲内で誰もが解答でき、新たに何かをを暗記する必要もありません。

 

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