建設部門必須科目Ⅰの過去3年の出題傾向を分析し、その結果から今年度の出題テーマを想定しています。想定問題も2問作成したので、これから準備する方は参考にしてください。
問題文構成と設問内容は変わらないのか
過去3年間の必須科目Ⅰの問題文は、前文と(1)~(4)の4設問で構成され、図表は示されていません。この問題文構成は、今年も変わらないと思います。
前文には、日本の社会情勢と社会のニーズが書かれており、前文の内容を踏まえて設問に解答することが求められます。
設問(1)には、課題抽出のテーマや解答条件が書かれています。解答条件は、技術者の立場で多面的な観点から3つ抽出すること、観点を明記した上で内容を示すことなど、年々細かくなっており、今年も条件が加えられるかもしれません。
設問(2)では、抽出した3課題から最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題への複数の解決策を示すことが問われます。これまでは、解決策の提示数は指定されていませんが、今年は他部門のように3つ挙げるよう指定される可能性も否定できません。
設問(3)では、解決策を実行して生じうるリスクとそれへの対応策、または解決策を実行して生じる波及効果と懸念事項への対応策が問われます。問われ方が2パターンありますが、リスクと懸念事項は同じことで、どちらも負の波及効果から派生するものです。
設問(4)では、設問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件と留意点が問われます。わかり難い言い回しですが、公益確保を最優先とする倫理要件と環境負荷軽減への留意点を問われています。
過去3か年の出題テーマを分析して見えたこと
出題テーマとは、問題を解決して良い状況にする目標のことで、過去3年間の問題ではいずれも設問(1)の「技術者として・・・」の前に書かれています。今年も例年通り設問(1)の前半に着目すれば、簡単に見つけられるはずです。
出題テーマは、課題を抽出するための目標ですから、前文の社会情勢や社会ニーズに深く関連してきます。過去3年間で出題された必須科目Ⅰの6問について、社会情勢、社会ニーズ、出題テーマを一覧表にすると次のようになります。
社会情勢としては、過去6問のうち人口減少が2回、自然災害が2回、老朽化1回、地球環境1回が出題されています。社会ニーズは、各問題で言い回しは違いますが、どの問題も経済成長を続けられる社会の構築を求めています。
出題テーマは、社会ニーズを達成するために、建設部門が実現すべき目標です。過去6問の出題テーマは、すべて違っています。社会情勢や社会ニーズが同じでも、出題テーマを毎回変えていることから、おそらく今年も過去問とは違うテーマが出題されると考えられます。
不都合な社会情勢関連の未出題テーマを想定する
今年度の問題文も例年通り、前文には、日本にとって不都合な社会情勢と持続的に成長する社会構築のニーズが示され、設問(1)において、建設部門が実現すべき目標が課題抽出のテーマとして出題される出でしょう。
出題テーマは、現状の不都合な社会情勢に深く関連します。不都合な社会情勢としては、過去問に出題された人口減少・自然災害・老朽化・地球環境を考えておくべきです。そして、それらの社会情勢に関連する未出題のテーマが、今年の出題テーマになる可能性が高いと考えます。
人口減少では、生産性向上と担い手確保が出題済みなので、それ以外の技術継承や地方創成などのテーマが想定されます。
自然災害では、安全安心の確保と風水害の防止削減が出題済みなので、それ以外の強靭化推進や大規模地震対応などのテーマが想定されます。
老朽化では、出題済みの戦略メンテナンス以外に、長寿命化や予防保全推進などのテーマが想定されます。
地球環境では、出題済みの循環型社会以外に、脱炭素化や自然共生社会の実現などのテーマが想定されます。
脱炭素社会と大規模地震対応をテーマとした想定問題
2050年カーボンニュートラルの実現は、日本にとってかなり重たい問題だと思います。建設分野では、社会インフラの計画・設計・施工・維持・更新のライフサイク全体で脱炭素化を進めることが求められ、そのためにはグリーンイノベーションの創出が不可欠と考えます。
また、東日本大震災から10年が過ぎ、大規模地震への関心が薄まっているとは言え、南海トラフ、首都直下、日本海溝・千島海溝などの巨大地震の発生が切迫しています。それらの大規模地震への備えに対しては、建設部門が果たす役割は相当大きいはずです。
そのような考えから、令和4年度の必須科目Ⅰの想定問題を2問作成してみました。出題されるかどうかわかりませんが、建設部門の技術士になるのであれば、自分なりの考えを持っておくべきテーマだと思います。
このような状況において、建設分野においても、脱炭素化に向けたイノベーション創出をさらに進めていく必要があることを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)2050年カーボンニュートラルの実現に向け、社会インフラのライフサイクル全体における脱炭素化を進めるに当たり、技術者としての立場で多面的な観点から3つ課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行した上で生じる波及効果と、専門技術を踏まえた新たな懸案事項への対応策を示せ。
(4)前問(1)~(3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。
(1)防災・減災が主流となる社会の構築を実現に向け、切迫する大規模地震への対応に当たって、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
(4)前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から必要となる要件、留意点を述べよ。


