河川砂防について、令和以降の過去問テーマから令和4年度の出題テーマを予想してみました。試験本番まで1カ月余りになりましたが、これから本格的な準備に入る方は参考にしてください。なお、すでに準備万端の方は、迷いが生じるかもしれませんので無視してください。
河川砂防Ⅱ-1の出題テーマ予想
河川砂防のⅡ-1は、河川、ダム、砂防、海岸の4分野の問題が1問ずつ出題されており、この傾向は令和4年度も変わらないと思います。
Ⅱ-1-1の河川分野では、堤防の維持・補強、流下断面回復などの洪水災害防止に必要なテーマが出題されています。この傾向からすると、今年は流下断面の拡大対策(堤防嵩上、引堤、河道掘削)の出題が予想されます。また、昨年の特定都市河川浸水被害対策法が改正されており、流域治水の法的枠組み整備に関連した出題も否定できませんが、過去問の傾向から法律関係の出題は無いでしょう。
Ⅱ-1-2のダム分野では、土砂管理やダム再生など、最近の行政施策を反映したテーマが出題されています。ダムは専門外なので予想し難いのですが、最近の話題から考えると、気象変動に対応した洪水調整の強化対策などのテーマが予想されます。利水関係のテーマは、過去問を見る限り無いと思います。
Ⅱ-1-3の砂防分野では、土砂災害の特徴を踏まえた土砂洪水や土石流対策に関するテーマが多く出題されています。砂防と言えば、昨年の熱海の土石流災害は衝撃的な出来事でした。既存の砂防ダムで防げなかったことを踏まえ、今年は砂防施設の整備計画のあり方について問われる可能性があると思います。
Ⅱ-1-4の海岸分野では、波浪解析や護岸天端設定に関連するテーマが出題されています。この分野も専門外で予想は難しいのですが、昨年末に日本海溝・千島海溝地震の被害想定が公表され、沿岸では20m級の津波が発生するとされています。南海トラフ地震でも10m級の津波は発生するとされており、今年は津波に関連したテーマを想定しておく必要がありそうです。
以下、私が考える令和4年度のⅡ-1の予想テーマです。
令和4年度、河川Ⅱ-1の予想テーマ
予想Ⅱ-1-1:流下断面を拡大する対策工法、実施上の留意点
予想Ⅱ-1-2:ダムの洪水調整の強化対策の進め方、運用上留意点
予想Ⅱ-1-3:砂防堰堤の目的と効果、土石流堰堤の計画規模の考え方
予想Ⅱ-1-4:大規模津波に対する海岸保全の考え方、護岸機能強化方法
河川砂防Ⅱ-2の出題テーマ予想
河川砂防Ⅱ-2では、過去3か年は防災・災害に関する計画・検討業務が多く出題されています。問題文には、必ず「河川、砂防、海岸・海洋のいずれかの分野を対象として答えよ」と書かれているので、特定の分野に偏ったテーマは出題されないと考えて良いでしょう。
R2年に再度災害防止対策プロジェクトが出題テーマとなっていますが、これはH30年7月豪雨やR1年東日本台風の被害を受けて実施された緊急治水プロジェクトを意識したテーマです。そう考えると、今年は始まったばかりの流域治水プロジェクトに関するテーマが出題されることが予想されます。また、防災系のテーマとしては、地域の水害対応タイムラインの策定業務の出題も十分あり得ると思います。
維持管理系では、昨年、長寿命化計画策定業務が出題されました。今年は、インフラDXの流れに乗って、三次元データを活用した施設管理計画策定業務の出題が考えられます。
以下、私が考える令和4年度のⅡ-2の予想テーマです。
令和4年度、河川砂防Ⅱ-2の予想テーマ
予想Ⅱ-2-1:ハード・ソフト一体の事前防災対策計画策定業務
予想Ⅱ-2-2:三次元データを活用した施設管理計画策定業務
河川砂防Ⅲの出題テーマ予想
河川砂防Ⅲでは、過去3か年は水防災、施設管理、土砂管理、ICT・センシング活用など幅広いテーマが出題されています。
デジタル技術による生産性向上は、平成時代にも多く出題されており、今年も防災や維持管理での活用が出題される可能性はあると思います。しかし、今年は、近年の火山活動の活発化や熱海の土石流災害を踏まえて、土砂移動による災害リスク対応に関するテーマが出題される可能性が高いと考えます。
また、令和2年1月から「水災害対策とまちづくりの連携のあり方」検討会が開催され、昨年5月にはガイドラインが公表されました。流域治水に関しては、昨年11月に「特定都市河川浸水被害対策法等の一部を改正する法律」が施行されています。このような状況から、都市部での水害・土砂災害による被害の防止・軽減などのテーマが出題される可能性が高いと思います。
以下、私が考える令和4年度の河川砂防Ⅲの予想テーマです。
令和4年度、河川砂防Ⅲの予想テーマ
予想Ⅲ-1:流域内の土砂移動による災害リスクの把握と安全管理
予想Ⅲ-2:都市部での水害・土砂災害による被害の防止・軽減
おわりに
河川砂防の特徴としては、Ⅱ-1が4分野に分かれており法律関係のテーマは出ないこと、Ⅱ-2は対象分野を選んで解答するため分野に偏ったテーマは出ないこと、Ⅲは比較的最近話題となったテーマが出題されることなどが挙げられます。専門範囲が広い科目なので、出題テーマを予想するのは難しいと思います。しかし、過去問から傾向を掴めば、予想テーマをある程度絞り込めそうです。
Ⅲの問題解決では、必須科目と似たような解答になりやすいのですが、必須科目が国土全体が対象なのに対し、選択科目では流域内を対象に、防災対策、施設の維持管理、ICT/センシング活用を考えていくようにします。例えば、災害リスの高い流域内にローカル5Gを構築して、氾濫情報の収集や避難情報の発信を行うなどは、河川砂防分野に特化した技術提案になると思います。




