技術士にふさわしい経歴を示す唯一の書類
技術士になるには、技術士にふさわしい業務経歴(経験)が一定年数(一般には7年以上)必要です。筆記試験では、専門知識、応用能力、課題解決能力の有無は判断できても、その人の経歴までは判断できません。
技術士にふさわしい経歴を判断するには、受験申込書の業務経歴票を見るしかないのです。しかし、業務経歴票に書かれていることが、本当かどうかは分かりません。誰が書いたものかも、見ただけでは分からないのです。
そこで、筆記試験の合格者を呼んで、経歴票の内容を本人に直接聞いて確認します。それが口頭試験です。口頭試験では、本当にこの人がやった業績なのか、誰かの指示に従っただけじゃないのか、部下の業績を横取りしているだけじゃないのか、そんな疑いを晴らそうとします。
業務経歴票はすごく立派なのに、本人の話しぶりからはそれが感じられなかったり、書類と会話の内容が食い違っていれば、試験官も疑わざるを得なくなります。
経歴票に書かれている詳述業務の内容がひどくても、口頭説明が良ければ合格できます。逆に記述内容はすばらしいのに、口頭での説明がさっぱりなら不合格になります。
一度提出してしまった業務経歴票を覆すことはできません。業務経歴票は受験申込書の一部なので軽く考えがちですが、技術士になるために最も重要な書類なのです。
これだけは避けたい。業務経歴票の致命的なミス
とても重要な役割を果たす業務経歴票ですが、書き方でミスを犯しているものをたくさん見かけます。多少のミスは口頭試験の時に説明すれば分かってもらえますが、次の2つは致命的ミスなので挽回は極めて難しくなります。
致命的ミス1:業務経歴と選択科目・専門事項の不一致
「業務経歴・詳述業務の内容が、選択科目や専門とする事項と合っていない」と判断された場合は、どんなに記述内容が良くても不合格となります。
なぜなら、技術士は「高等の専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価又はこれらに関する指導の業務を行う者」と技術士法で定められているからです。
つまり、技術士として専門が違うというのは法律に反しているわけで、絶対に認めるわけにはいかないのです。河川の経験しか無い人に、道路を専門とする技術士の称号を与えるわけにはいかないのです。
また、「鋼構造及びコンクリート」の受験で、経歴票のほとんどが「基礎設計」の場合も、専門は「土質及び基礎」と見なされて、選択科目と経歴の不一致で不合格になります。
受験申込書に書く「選択科目」「専門とする事項」は慎重に検討すべきです。自分で勝手に判断するのではなく、既存の技術士に見てもらうことをお勧めします。
致命的ミス2:詳述業務で立場・役割が不明
詳述業務で立場・役割が不明な場合も、口頭試験で落される要因となります。特に大型プロジェクトなどでは、責任範囲を明確にしないと誰の成果なのか極めて曖昧になります。
いくら説明しても「あなたの業績じゃない」と思われたなら不合格です。なぜなら、本人の業績じゃなければ、技術士にふさわしい実務経験が有るか無いかの判断がつかないからです。
自分の業績だと理解してもらうために、詳述業務での立場・役割を「~担当、~の技術的指導」などと明確に書くべきです。
立場を役職と勘違いしている人も多くいます。部長などの役職は、実務をしない立場と思われます。役職は経歴票に書くので、詳述業務でわざわざ書く必要はありません。
専門とする事項は受験申込案内の一覧表から選ぶのが基本
専門とする事項は、受験申込の案内にある技術部門・選択科目表の「選択科目の内容」から選ぶのが基本です。
口頭試験の試験官は、専門とする事項で振り分けられます。自分の専門と違う試験官に当ると、専門外の質問が浴びせられるので、口頭試験で落ちる確率が高くなります。
例えば、選択科目「鋼構造及びコンクリート」で受験する時、専門とする事項に「橋梁設計」と書いてしまうと専門が鋼構造なのかコンクリートなのか不明となります。
コンクリートが専門なのに鋼構造の試験官が振り分けられたら、口頭試験で話がかみ合わなくなって不合格になる可能性は高くなります。
専門とする事項を自分で勝手に作りたがる人もいますが、その場合は既存技術士などに相談することをお勧めします。
受験申込書は試験の一部、早めの準備が勝利への近道
受験申込書は試験の一部と考えて作成すべきです。
筆記試験は5 時間半一本勝負、カンニングは絶対にダメです。口頭試験は20 分一本勝負、身体一つで挑みます。
それに比べて受験申込書は、時間無制限、何度でも書き直しOK、それに何を見てもOKです。これを生かさない手は無い、これを上手く生かすことが勝利への近道になるのです。
初受験の人は、会社の捺印が必要だったり、提出書類が増えたりと面倒ですので、早めに準備しておくことをお勧めします。
まとめ
- 業務経歴票は技術士にふさわしい経歴を示す唯一の書類なので、安易に書かないようにしましょう。
- 業務経歴・詳述業務の内容と選択科目、専門事項の不一致は不合格になります。
- 詳述業務は立場・役割を明確にしなければ不合格になります。
- 専門とする事項は、技術部門・選択科目表の「選択科目の内容」を書くのが基本です。
- 受験申込書の早目の準備が、合格への近道となります。
