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【技術士筆記試験】試験官の立場になって採点方法を考えてみた

過去記事

建設部門の道路科目では、採点委員は6人しかいません。択一で4割が足切りされたとしても、一人当たり250人分の答案を採点する計算になります。もしそうだとすれば、採点者は1700枚ほどの手書きの答案を採点しなければならないのです。これだけの答案をどのように採点するのか考えてみました。

「道路」の採点者は約1ヵ月半で250人分の答案を採点する

建設部門で受験者数の多い「道路」では、毎年2,500人程が受験します。

この内、必修科目(択一)で足切りを免れた人が6割いるとすれば、2,500×0.6=1,500人が筆記試験(論文)の採点対象となります。

これに対して、「道路」の作問・採点委員は6人と少ないです。

1,500人分の答案を6人で採点するわけですから、一人で250人分の答案を採点することになります。採点期間は、準備や集計期間を考慮すれば、1ヵ月半程度だと思われます。

単純計算すると一日5人以上の答案を見る計算になりますが、試験管は本業も持っている忙しい人達です。そんなにゆっくり時間をかけてみることはできないはずです。

 

あなたなら、250人の論文をどうやって採点しますか

筆記試験答案は一人最大7枚です。これが250人分だと、答案枚数は最大1,750枚にもなります。では、どうやって採点するのでしょう。

忙しいあなたは、汚い文字が並ぶ手書きの解答を1枚1枚じっくり読みますか?

そうはしませんよね。ぱっと見てダメな解答は、初めから読まないのではないでしょうか。私も添削をする時はそうします。おそらく、試験官も同じだと思います。

 

以下は、私が推測する筆記答案の採点方法です。

 

私なら、まずは見た目で判断して150人に絞ります

3枚指定なのに2枚しか書けてないとか、字が汚くて読めないとか、時間切れで結論が見えないとか、そんな答案は読む価値はないので除外します。

まずは見た目で判断です。この時点で6割に絞ります。250人の6割なので残りは150人です。ここで捨てられた解答は、C評価で二度と見ることは無いでしょう。つまり不合格決定になるわけです。

 

私なら、次に見出しタイトルで90人に絞ります

残った150人分の論文を見出しタイトルだけで、更に6割に絞り込みます。

試験官は自分が作った問題なので、解答してくる内容も概ね想定しています。見出しタイトルを見て、このタイトルじゃダメだと思ったなら、じっくり読まないでしょう。

Ⅱ応用能力問題では、「業務遂行能力と説明能力」を確認するので、答案に遂行手順、作業項目、留意点等のタイトルがなければ、ダメだろうと判断できます。

Ⅲ課題解決問題では、課題と解決策のタイトルを見て、論理性と整合性が見えなければ、ダメだろうと判断できます。

ここで6割に絞ると、150×0.6=90人となります。ここで見捨てられた解答は、B評価にされるでしょう。出来が悪ければC評価もあり得ます。応用能力と課題解決が、どちらもB評価なら、ここで不合格決定となります。

 

ここまでで、試験官一人当たり90人、6人の試験官で540人、受験者数2,500人の22%に絞り込まれたわけです。H28「道路」の受験者数2481人でした。そのうち、筆記試験受験者は458人(18.5%)でしたから、あと100人程度絞れば実際の合格率に近くなります。

このことから、論文をじっくり読まなくても、合格者の絞込みは可能だということが分かります。

 

私なら、課題解決論文の内容を重視します

もう少し合格者を絞り込む作業をします。ここからは、論文内容で差を付ける作業です。

筆記試験の論文は専門知識、応用能力、課題解決の3種類です。このうち重要なのは、課題解決論文です。なぜなら、課題解決能力は技術士に必要な絶対条件なので、ここの出来が悪いと不合格の可能性が高くなります。

専門知識や応用能力のできが悪くても、課題解決能力が良ければ、合格できる可能性は高くなります。

知識はネットで調べれますし、応用能力(遂行手順)は経験を積めば身に付きます。しかし、課題解決能力はネットで調べて得られるものではなく、単に作業経験から身に付くものでもありません。

技術士試験ですから、ハイリスクの科学技術を取り扱える能力を試す試験です。リスクを発見し、その危険度を評価し、それを最小限とする対策を提案できる能力が課題解決能力です。その能力を持っていない人を技術士にしてはいけないのです。

 

私なら、他者と違う切り口のタイトルは残します

問題文が決まっているので、答案のタイトルも似たものが多くなります。タイトルだけを見て、「またこれか」と思うと採点作業も少々嫌気がさして、採点作業も漫然となりがちです。

そんな中で、他者と切り口が違うタイトルが目に入ると気になります。その場でざっと読んである程度理解できれば、その答案はとりあえず合格側にキープします。内容次第では、合格印を押すかもしれません。

例えば、「構造物の老朽化」がテーマの問題では、「アセットマネジメントの推進」などのタイトルが並びます。そんなタイトルなら、中身もある程度想像がつくわけです。

それは分かるけど、労働力もお金も無いのにどうやってアセットマネジメントを推進するの?

そんな疑問を抱いている時、「日常点検における市民活動の取り込み」のような、他とは違ったタイトルが目に飛び込むと、中身を読んでみたくなるはずです。中身を読んでもらえることは、合格に一歩近づいたということです。

 

私なら、似たものタイトル同士の答案はキーワード数で優劣つけます

似たものタイトル同士の答案に優劣をつけるためには、埋め込まれているキーワード数を比べるのが簡単です。キーワードに着目して、ざっと走り読みすれば、簡単に違いがわかります。

Xさんの答案には3個キーワード入っているけど、Yさんは2個しか入っていないので、とりあえずXさんを合格側に残して、Yさんは不合格側に置きます。

試験官は、合格か不合格かで分けなければなりません。いったん不合格側に置かれた論文が、合格側に復活することは、ほとんど無いと思います。

キーワードは、数の問題ではないけれど、数も重要だということは理解しておくべきです。

 

試験官も人間なので、評価はおおざっぱにABCです

専門問題は、「専門知識・応用能力問題Ⅱ」と「課題解決問題Ⅲ」の合計で評価されます。どちらかがB評価(6割以下)でも、その合計(総合)がAなら筆記試験は合格です。

公正を期すために、採点者用の評価マニュアルはあるようです。しかし、正解のない論文形式の答案に、点数を付ける事はできないと考えた方が良いと思います。

私も、筆記論文の添削では点数化はできません。これ65点、これ45点なんて点数付けは、絶対に無理です。ですから、どうしてもABCみたいな大ざっぱな評価になってしまいます。

試験官も同じだと思います。せいぜい定性的にABC評価するのが限界ではないでしょうか。ですから、問題ⅡとⅢの評価が、BAでもABでも、総合Aや総合Bが存在するのだと思います。

小説でも漫画でも、細かく点数をつけられませんよね。どんな採点マニュアルを作ったとしても、読者全員が同じ点数を付けることはあり得ないです。でも、「面白い、普通、つまらない」から選べと言われたら簡単ですよね。

技術士試験も、「なるほど」「そうか」と思ってもらえる内容なら、多くの試験がA評価してくれるはずです。

 

まとめ

筆記試験に合格したければ、試験官がどうやって採点するかを考えて見ると良いでしょう。

試験官は、あなたの解答をじっくり読んでいるわけではなく、まずは見た目で判断しているのです。

筆記試験ではタイトルが重要になります。読まなくても、内容が分かるタイトルを付けるべきです。

同じテーマの答案は同じようなタイトルばかり並ぶので、採点者も漫然となりがちです。他と違う切り口のタイトルは、試験官も気になり捨て難くなります。

技術士試験では、課題解決能力の有無が最も重要視されます。応用能力・専門知識の出来が悪くても課題解決が良ければ合格できます。

同レベルの論文に優劣を付けるとするなら、キーワードの数も重要になってきます。

論文を定量的に点数化することは難しいはずです。試験官に「なるほど」「そうか」を思わせたら、多くの試験官は合格にするはずです。

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