試験官が聞きたいことは3つ
口頭試験で聞かれることは、以下の3項目だけです。約20分でこれらを確認します。
- 経歴及び課題解決能力
- 技術士としての倫理感
- 技術士制度への理解度
「1.経歴及び課題解決能力」では、受験申込書(願書)に書いてある業務経歴や詳述業務が、本人の実績であるか、課題解決能力を発揮したものであるかを確かめます。
「2.技術としての倫理感」では、プロとしての倫理観を確かめます。質問の仕方はいろいろですが、基本的に「公益確保優先」の倫理観を確かめようとします。
「3. 技術士制度への理解度」では、主に技術士法に関する認識を確かめます。技術士の定義や技術士法の3義務2責務の内容確認、CPDへの認識などを聞かれます。
いずれも6割以上と判断されれば合格、一つでも6割未満なら不合格となり、来年出直しとなります。質問順番は決まっていないません。いきなり詳述業務を説明させられることもありますし、倫理の質問から入る場合もあります。
受験者が答えるべきことは3つ
口頭試験は加点式です。試験官が上記の3項目を時間内に確認できれば合格です。逆に確認できなければ不合格となります。不合格者の多くは、不適格と判断されたというより、適格性が確認できないので判断がつかなかった人達と思われます。ですから、受験者は以下の3つ(技術士としての適格性)が伝わるように答えるべきです。
- 課題解決能力があること
- 常に公益確保を優先すること
- 技術士の役割を理解していること
この中で最も難しいのは、一番目にある課題解決能力を伝えることです。ここが伝われば、あとの二つはそれほど難しくないでしょう。
課題解決能力は、主に受験申込書の詳述業務に関する質問で確認されますが、筆記試験の課題解決問題の解答からも質問される場合があります。どちらも口頭試験で参考にされる重要なペーパーです。
試験官が理解しやすい課題解決能ストーリー
課題解決能力の有無を判断するために、試験官が詳述業務で確認したいことは、高度な知識や輝かしい成果ではありません。小さな仕事でも、技術的課題を見つけてそれを解決した課題解決ストーリーなのです。
詳述業務を読んで課題解決ストーリーが理解されれば、確認程度の簡単な質問で終わります。しかし、ストーリーが理解できない文章であれば、口頭試験であれこれ質問を浴びることになります。質問は全て課題解決ストーリーを確認するためです。
ですから、短い口頭試験時間で課題解決ストーリーが伝えられるように、準備することが重要です。課題解決ストーリーは、次のような3つのパターンにはめると理解しやすくなります。
- 普通ならこうするところを、違う視点から分析して課題を解決した。
- 確立した手法が無いことに対し、論理的思考に基づき課題を解決した。
- トレードオフ関係を課題と捉えて、公益確保を優先して解決した。
「詳述業務が技術士にふさわしい点は?」の答え方
「この詳述業務が技術士にふさわしいと考える点は?」と聞かれたら、ストーリーを上記の3パターンに当てはめて次のように説明すれば良いでしょう。
- 1番目のストリーなら、「通常用いられる○○手法では△△のリスクがあると考え、□□によりそのリスクを最小とする方法を見出した点が技術士にふさわしいと考えます」
- 2番目のストリーなら、「○○については確立された手法が無いため、△△の手法に□□の観点から検討を加え改良し、課題を合理的に解決できた点が技術士にふさわしいと考えます」
- 3番目のストリーなら、「この業務では、○○と△△がトレードオフの関係にあることを見出し、その解決に当って□□の観点から検討して最適案を提案した点が技術士にふさわしいと考えます」
今さら業務経歴票の詳述業務の内容は変えられないので、少なくともこのような課題解決ストーリーだったと語れるように準備すべきです。
口頭試験で落される典型的パターン3つ
口頭試験で落とされるのは、筆記試験合格者の1割~2割で、そのほとんどは以下のいづれかに該当したためと思われます。
- 課題解決能力が確認できない
- 専門と経歴が合っていない
- 公益確保が優先されていない
繰り返しになりますが、1番目の課題解決能力が確認できない場合は、不合格になります。詳述業務を読むだけで確認できないものは、口頭試験の説明で確認するしかありません。
中には相当厳しい詳述業務ものもあるでしょう。しかし、私が見てきた限りでは、ほとんどが口頭説明で挽回可能な内容ばかりです。決して諦めずに、しっかり準備しましょう。
2番目の専門と経歴が合っていないと判断された場合は、合格はほぼ絶望的と考えて良いでしょう。なぜなら、技術士は「高等の専門的応用能力を必要とする事項についての・・・業務を行う者」と技術士法で定められているからです。
専門が違えば、いくら高等で応用能力を発揮しようが技術士にはなれないのです。ただし、相当厳しそうなケースでも、口頭試験の説明で、なんとか合格できた事例もあるので諦める必要は無いです。
3番目の公益確保が優先されていない場合も、致命的になります。「会社のためにデータ改ざんを指示されたらどうしますか」との質問に、「会社を守るために従います」と答える人を技術士にはしません。
「会社に改ざんのリスクを粘り強く説明して、どうしても理解を得られない場合は、公益の確保を優先して第三者に判断を委ねる」と説明すれば良いのです。
口頭試験は落とそうとしているのではなくて、合格させようという姿勢で質問してきます。その期待に応えれば、簡単には落とさないはずです。
まとめ
- 試験官が口頭試験で確認することは、「1.経歴及び課題解決能力、2.技術士としての倫理感、3.技術士制度への理解度」の3つのみです。
- 受験者が口頭試験で答えるべきことは、「1.課題解決能力があること、2.公益確保を優先すること、3.技術士の役割を理解していること」の3つを伝えることです。
- 口頭試験では、詳述業務の課題解決能ストーリーを3パターンに当てはめて、技術士にふさわしい業務であることを一言で説明できるように準備すべきです。
- 口頭試験では、「1.課題解決能力が確認できない、2.専門と経歴が合っていない、3.公益確保を優先していない」の3パターンに該当すれば不合格になるので注意しましょう。
