
技術士に必要な問題解決能力。その意味をコンピテンシーの説明文から探ると4つの重要スキルが見えてきます。二次試験では、願書提出から口頭試験までの全過程で問題解決能力が試されます。そのため、この4つの重要スキルが合否のカギを握るかもしれません。
コンピテンシーの中で最も重要なのが問題解決
技術士に求められるコンピテンシーとは、「専門学識・問題解決・マネジメント・評価・コミュニケーション・リーダーシップ・技術者倫理・継続研さん」の8つです。
この内、最も重要なのが「問題解決」です。技術士二次試験は、業務経歴票、筆記試験、口頭試験のいずれにおいても、この問題解決能力を確認されます。旧制度では、問題解決のことを課題解決と言っていましたが、本質的には同じことです。
技術士二次試験では、問題解決能力があると認められない限り、いくら知識があっても合格できません。つまり、問題解決の意味を理解しなければ、合格は難しいということです。
問題解決の説明文に隠された4つの重要スキル
公表されている「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」の説明文には、問題解決について次のように書かれています。
この説明文で着目したいのが、赤文字の4フレーズ。少しわかり難いのですが、これらのフレーズに技術士に必要な4つの重要なスキルが隠れています。
【問題解決】・・・公表説明文
- 業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
- 複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。
複合的な問題に対応する能力
現代社会が抱える問題は、1つの技術分野のみで解決できるものばかりではありません。
例えば大規模災害は、気象・地形・地盤などの自然要因だけではなく、開発・施設・避難などの社会要因も複雑に関連して発生します。
技術士が複雑な問題を解決するためには、自身の専門技術を含め、どの分野の技術が必要かを適切に見極める能力が必要なのです。そして他分野の専門家と連携を取りながら、問題に対応する能力も必要となります。
問題の内容を明確にする能力
問題を捉える場合、「誰にとって何が問題」なのかを明らかにすることが重要です。それによって、調査・分析も提案する解決策も変わってくるからです。
例えば、住民にとって洪水発生が問題なら、ダム建設は有効な対策かもしれません。しかし、ダムを建設によって、観光産業や水産業は衰退するかもしれないのです。つまり、誰のためかという観点が変われば、対策の有効性も変わってくるのです。
問題の内容が明確になれば、「誰のために何をすべきか」も明らかになります。すなわち、課題の抽出や解決に向けてやるべきことが明確になるのです。
相反する要求事項を考慮する能力
相反する要求事項とはトレードオフのことで、品質とコストの関係を考えるとわかりやすいと思います。品質を上げるためにはコストを犠牲にし、コストを下げるには品質を犠牲にしなければいけません。
トレードオフの難しいところは、どこで折り合い点をつけるかということです。トレードオフ問題は、公共事業でも安全性とコスト、品質と工期などたくさんあります。
トレードオフの最適解をクライアントやユーザーに提供することは、技術士にとっての重要な役割なのです。
影響の重要度を考慮する能力
これは、リスクの分析・評価を適切できる能力を要求するものです。技術士には、取り扱う技術のリスクを最小とする役割があります。そのために、リスクを分析し、評価できる能力が必要なのです。
例えば、安全性とコストのトレードオフ問題で、安全性を重視してコストを犠牲にすれば、予算オーバーのリスクが残ります。ですから、予算オーバーの影響を分析して評価する必要があるのです。安全第一の対策にもリスクが存在しているということです。
技術士には、クライアントやユーザーにメリットの説明だけではなく、リスクも説明する使命があるのです。
まとめ
技術士のコンピテンシーの説明文から見えた、問題解決に必要な4つの重要スキルをまとめると以下のようになります。
- 多分野にまたがる問題にも対応する能力
- 誰にとっての問題かを明確にする能力
- トレードオフの最適解を提案する能力
- 潜在リスクを分析・評価・説明する能力
経歴票の業務詳細、筆記試験の必修科目Ⅰと選択科目Ⅲ、口頭試験において、この4つのスキルを発揮して問題解決できることをアピールすべきです。
そこが試験官に伝われば、合格は大きく近づくのですから。。。

