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技術士試験で観点明記の要求が強まる理由と高得点につながる解答方法

筆記試験

必須科目Ⅰと選択科目Ⅲでは課題抽出の観点を明記するよう要求されます。観点明記への要求は年々変化しており、最近では必ず観点を先に示すよう強く要求する設問が増えつつあります。本稿では、その理由と高得点につながる解答方法を解説します。

 

設問(1)で問われる課題抽出の観点とは

必須科目Ⅰと選択科目Ⅲの設問(1)は、コンピテンシー「問題解決」の第1項(黒丸1)を確認する設問です。「問題解決」の第1項には、「業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること」とあります。つまり、設問(1)の解答から、複合的な問題の要因を抽出して分析する能力を確認しているということです。

複合的な問題は、複数の個別問題で構成される全体問題です。複合的な問題の要因を抽出するとは、全体問題を大きくしている個別問題を特定するということです。そして、特定した個別問題の要因を分析すれば、個別問題を小さくするための課題を抽出することができます。

したがって、設問(1)で問われる課題抽出の観点とは、複合的な問題を大きくしている個別問題を特定するための異なる視点だと言えます。例えば土砂災害対策では、気象・地質・地形などの異なる視点から、それに起因する個別問題を特定しなければ、対策に向けた課題は抽出できません。

 

設問(1)における課題と観点の問われ方

下表は、必須科目Ⅰにおける課題と観点の問われ方を過去7年分並べたものですが、課題と観点の示し方の指示が年度ごとに変化していることがわかります。また、課題と観点の示し方の指示は、4つのパターンに分類できます。

課題と観点の示し方の指示分類
① 多面的観点から課題を抽出し分析せよ
② 課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ
③ 観点を明記したうえで、課題の内容を示せ
④ 解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ

①②は課題抽出を優先した指示であり、③④は観点明記を優先した指示です。上表を見れば、年度が進むにつれて、観点明記への要求が強まっていることがわかります。このような変化は、選択科目Ⅲでも見られます。

 

観点明記への要求を強めてきた変遷

次表は、必須科目Ⅰと選択科目Ⅲで出題された2問について、観点明記への要求を強めてきた変遷をまとめたものです。セル内の記号は観点明記への要求の強さを表しており、「空白→△→〇→●」の順に要求は強くなっています。

R1,R2年度は、課題抽出を優先する指示がほとんどで、観点明記を強く求めてはいませんでした。

しかし、R3年度以降は、観点を明記してから課題の内容を示す指示に変わっています。R5年度の施工計画では、「解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ」と観点明記を強く指示をする表記がはじめて使われ、R6,R7年度には必須科目や他の選択科目に広がっています。

このように、「観点を先、課題は後」の順番で解答する要求は、年々強まっていることから、それに従わない解答への減点幅も年々大きくなっていると考えられます。

 

観点を先に示す要求を強めてきた理由

技術士のコンピテンシーはH26年に作成され、H27年に公開された「修習技術者のための修習ガイドブック第3版」に掲載されていました。しかし、コンピテンシーが二次試験に導入されるまで、その存在すら知らない技術士も多く、修習技術者の育成にも反映されることは少なかったと思います。

平成時代の二次試験にも「多面的観点から課題を述べよ」という設問はありましたが、観点を先に示す要求はありませんでした。そのため、コンピテンシーを導入したばかりR1,R2年度は、作問者・受験者ともにコンピテンシーへの理解度が進んでおらず、平成時代の感覚のまま試験が実施され、観点を先に示す必要性を感じていなかったのかもしれません。

観点を先に示す要求が強まったR3年(2021年)は、技術士のコンピテンシーのベースとなっている、国際エンジニアリング連合のプロフェショナルコンピテンシーが改定された年です。それに合わせて技術士のコンピテンシーも改訂しなければならず、R6年(2024年)には国際エンジニアリング連合の承認を得る必要がありました。

この頃から、コンピテンシーの本質を踏まえた試験制度に取組む姿勢が強まってきたように思われます。また、R5年度の受験申込み案内からは、コンピテンシーを確認する試験制度に変更されていることを、目立つように太文字で記載するようになっています。

設問(1)で確認する「問題解決」の第1項(黒丸1)は、複合的な問題の分析能力を規定しています。その分析能力を確認する試験官にとって、複合的な問題を大きくしている個別の問題をどのような視点から特定し、分析しているは重要な評価項目になります。平成時代のように課題を述べるだけであれば、それは単なる知識でしかなく、分析能力は確認できません。

このように、コンピテンシーの本質を踏まえた試験制度に変えるために、設問(1)で観点を先に示す要求が強まってきたものと推察できます。

 

観点を先に示して課題抽出する解答方法

設問(1)は、コンピテンシー「問題解決」の第1項で規定している「問題分析能力」を採点しているので、「課題に何を挙げたか」は採点に大きく関与しません。採点に大きく関与するのは、複合的な問題に含まれる個別問題をどの観点(視点)から特定し、その要因を分析して課題を抽出したかです。そのロジックが、現代の社会情勢やニーズに照らし合わせて合理的と認められれば、どのような課題を挙げても減点されることは無いはずです。

したがって、設問(1)の解答方法としては、見出しで観点を先に示し、本文で「問題特定→要因分析→課題抽出」の順で書く方法が、最も高得点につながると考えます。

次に「持続可能なインフラメンテナンス」をテーマとした解答例を示します。カラフルに色分けしていますが、「黒文字が観点明示」「緑文字が問題特定」「青文字が要因分析」「赤文字が課題抽出のパートです。このような構成で解答すれば、設問の指示に従いつつ、採点対象のコンピテンシー(問題分析能力)を示すことができます。

1.持続可能なインフラメンテナンスへの課題抽出
(1)「実施方法」の観点からの課題抽出
 今後、建設から50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加し、それに伴い修繕・更新が必要な施設も加速度的に増大していく。そのため、今後も従来型の点検・修繕方法で対応することは、インフラメンテナンスの持続性を阻害する要因となる。
 よって、対象施設の増大に対応できるように、「点検・修繕の効率化」が課題として抽出できる。
(2)「施設機能」の観点からの課題抽出
 近年、自然災害が激甚化・頻発化していることから、超過外力の繰返し作用し、老朽化インフラの機能低下が急速に進行していく。そのため、被災するたびに補修・補強・更新を要する施設が増大し、インフラメンテナンスの持続性を阻害する要因となる。
 よって、自然災害による劣化進行を遅らせるために、「超過外力の軽減」が課題として抽出できる。
(3)「管理体制」の観点からの課題抽出
 多くの地方自治体が、予算不足や技術力不足により、十分な点検・修繕を実施できない状況となっている。そのため、従来のような自治体ごとの管理体制を続けると、地域インフラ群のメンテナンスの持続性を阻害する要因となる。
 よって、地方自治体が適切に維持管理できるように、「管理体制の再構築」が課題として抽出できる。
 

おわりに

「観点を先、課題は後」の順番で解答するよう強く要求しているのは、R7年度時点では建設部門と電気電子部門だけです。電気電子部門では、建設部門より前のR4年度には、必須科目Ⅰと情報通信Ⅲで「解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ」との表記が使われています。また、情報通信Ⅲでは、コンピテンシー導入前のH30年度に「課題を多面的観点から抽出し分析せよ」との表記(R1年度と同様の表記)がすでに使われていました。
建設部門も、「解答の際には必ず観点を述べてから課題を示せ」と強い指示をしたのはR5年度の施工計画Ⅲが最初で、次年度の必須科目Ⅰ、土質基礎Ⅲ、鋼構造コンクリートⅢで同様の表記が採用されています。
このような経緯を踏まえると、電気電子部門の情報通信や建設部門の施工計画を先行事例として、観点明示を強く求めた場合の解答状況を作問側が把握していた可能性があります。その結果を見極めながら、同様の要求を行う技術部門や選択科目を段階的に拡大しようとしているのかもしれません。
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