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令和3年度技術士試験対策:必須科目Ⅰの想定問題と解答構成例

筆記試験

添削指導用に作った令和3年度必須科目Ⅰの想定問題と解答構成例を紹介します。最近よく耳にするインフラDXと定番の防災・減災をネタにしたものです。本番で出るかどうかはわかりませんが、受験対策の参考にしてください。

 

インフラDX推進をテーマとしたR3必須科目Ⅰの想定問題

今年度からスタートする第5次社会資本整備重点計画が閣議決定されました。

新計画は、国土強靭化やインフラ老朽化などの従来の課題に加え、ウィズコロナ社会、デジタル社会、脱炭素社会の実現など、新たな社会的課題を反映しています。令和3年度の必須科目では、この新たな社会資本整備重点計画の内容に沿ったテーマが出題される確率は高いと思います。

重点計画の中でも注目される一つが、新たに加わったインフラDXです。そこで、インフラDXをテーマとした必須科目の想定問題を次のように作成してみました。

想定Ⅰ―1  我が国は、新型コロナウイルス感染症など社会環境の大きな変化の中にある。このような状況において、「新たな日常」の実現を見据え、情報技術の利活用、新技術の社会実装を通じた社会資本整備分野のデジタル化・スマート化により、安全・安心で豊かな生活を実現していくことが喫緊の課題となっている。
(1)持続可能な地域社会の形成に向け、社会資本整備のデジタルトランスフォーメーションを進めていく上で、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2)抽出した課題のうち最も重要と考える課題を一つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)すべての解決策を実行した上で生じる波及効果と、新たな懸案事項への対応策を示せ。
(4)上記事項を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件・留意点を述べよ。

 

インフラDX推進が出題テーマの解答構成例

1.インフラDX推進の課題
・ 安全・安心で豊かな生活の実現に向け、情報、建設、機能の側面から、社会資本整備のデジタルトランスフォーメーション(インフラDX)推進の課題を抽出する
課題1:インフラデータの一元化と連携強化
・ インフラデータの分散、人流・物流・地形・気象データと連携されていないことが、 防災・減災対策やインフラメンテナンスが効率的に進まない要因になっている
課題2:建設プロセス全体のデジタル化と最適化
・ BIM/CIMの3Dデータの活用は、設計・施工・維持管理の各段階で活用状況が異なっているため、建設プロセス全体の生産性向上に繋がっていない
課題3:インフラ機能の最大化とスマート化
・ コロナ等の環境変化で交通・防災・医療等の各分野が直面している多様な課題を解決し、 自動運転や MaaS 等の革新技術が社会実装できる基盤が必要なため
2.最も重要と考える課題と解決策
最重要課題の選定:防災・減災対策やインフラ老朽化対策が遅れることは、人命や地域経済へ重大な影響を及ぼすため優先度が高く、 それらの対策にはインフラデータの利活用が必要であるため、課題1の「インフラデータの一元化と連携強化」を最も重要と考える
解決策1:地方自治体管理データの収集制度の整備
・運用が始まった「My City Construction」を活用したオンライン電子納品制度を整備し、地方自治体管理のインフラデータを収集する
解決策2:気象・洪水・地表変動データとの連携
・気象庁の気象観測、河川管理者の洪水観測、国土地理院の干渉SARなど、災害ハザードデータをインフラデータと連携させる
解決策3:人流・物流・施設利用データとの連携
・情報通信分野の人流データ、交通・運送分野の移動データ、各種施設の利用データとインフラデータを連携させる
3.波及効果と新たな懸念事項への対応
波及効果:他産業で新たなビジネスチャンスを生むプラスの波及効果、AI/ロボット依存による建設技術者の判断力低下や現場経験の減少などのマイナス波及効果がある
懸念事項:マイナス波及効果の顕在化により、建設分野での技術開発力や現場対応力が低下し、災害対応やインフラ維持管理に支障が生じることが懸念事項
対応策:VR/MRを使った技術者育成システムを導入、現場研修制度等による定期的な現場実務経験機会の確保
4.業務遂行に必要な倫理的要件
倫理要件:DX参加の自治体や企業利益ではなく、地域住民の安全・安心を優先
持続性確保:スマートシティでのグリーンインフラの導入、環境負荷の少ないまちづくり

 

防災・減災をテーマとしたR3必須科目Ⅰの想定問題

建設部門の最大の課題は、自然災害に対する防災・減災です。新たな社会資本整備重点計画でも、防災・減災は最重要課題となっています。

また、新型コロナ対策により債務残高が膨らんだことで、インフラ整備への予算付けにさらに厳しい財務省も、防災・減災対策を推進することを求めています。

昨年も防災・減災ネタの想定問題を作っていましたが、令和3年度版は次のように「防災・減災が主流となる社会を実現するための社会資本整備」をテーマとして作成してみました。

想定Ⅰ―2 近年、気候変動の影響により気象災害が激甚化・頻発化するとともに、南海トラフ地震等の大規模地震が切迫化している。また、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラも今後一斉に老朽化するため、適切な対応をしなければ社会経済システムが機能不全に陥るおそれがある。
こうした状況において、今後発生する水害・土砂災害・地震・津波・噴火・豪雪等の自然災害に対し、国民が安心して生活を送ることができる社会をつくる必要がることを踏まえ、以下の問いに答えよ。
(1)防災・減災が主流となる社会を実現するための社会資本整備に関して、技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し、その内容を観点とともに示せ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を、技術者としての倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。
 

防災・減災が出題テーマの解答構成例

1.防災・減災が主流となる社会の実現への課題
行政、企業、住民など様々な主体が、災害から命とくらしを守ることを意識して活動することが当たり前の社会の実現に向け、防災・減災・免災の観点から抽出する。
課題1:重要インフラの被害最小化と復旧迅速化
課題2:的確な避難行動を促す防災情報の提供
課題3:高危険度居住区の安全エリアへの移転
2.最重要課題の選定と解決策の提示
ハードの想定を超える大規模災害の発生を想定し、避難や救援などの初動が人命確保では重要である。そのためには、経路や時間確保が可能な施設強化や迅速な機能回復が必要になる。よって、最優先となる人命確保のために課題1「重要インフラの被害最小化と復旧迅速化」を最重要課題に選定し、解決策を提示する。
解決策1:じん性の高い施設整備
解決策2:施設老朽化対策の推進
解決策3:リダンダンシーの確保
3.解決策に共通して生じうるリスク
リスク:時間経過や環境の変化による有効性の低下
対応策:PDCAサイクルによるマネジメントの実践
4.業務遂行に必要な倫理的要件
技術者倫理: 財政 難や人材不足 など、事業主体の都合を優先するのではなく、 地域住民の安全・安心の確保を最優先に考え、プライオリティを付けて事業を進める
持続可能性:復旧時のリサイクルの推進やグリーンインフラの導入による防災機能の強化など、自然環境や生態系への影響を小さくして持続可能性を確保する

 

おわりに

今回紹介した想定問題は、2問とも添削指導で希望者に渡していたものです。

添削指導では、想定問題2問から1問選んで解答するよう指定すると、ほぼ全員がⅠ-1のインフラDXを選んでいました。

ただ、インフラDXでは何を書けば良いかがわからないという人が多く、A判定と思われる答案は極めて少ない状況だったので、仮に本番で出たとしても選択しない人が多くなるかもしれません。

防災・減災の方は、令和元年にも出題されているので、解答事例なども多く出回っているかと思います。昨年は災害ネタが出なかったので、今年は出題される確率は高そうです。

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