筆記試験の不合格通知を受け取った多くの人が、遅かれ早かれ来年の試験に向けて再スタートすると思います。この記事では、来年の合格に向けて再スタート前に考えてほしいことを7つ紹介していきます。合格へのアドバイスというより、失敗を繰り返さないためのヒントのような内容です。
①綿密過ぎる勉強計画は達成できないリスクが大きい
筆記試験の不合格通知を受け取り、今度こそしっかり準備して試験に臨もうと、多くの人が決意すると思います。そして、来年の筆記試験までの間に、勉強することはたくさんあると考えるでしょう。
しかし、筆記試験までの間には、お正月休みがあり、年度末の繁忙期があり、年度明けにはゴールデンウィークもあります。休日返上で勉強しようと思っても、家族サービスや会社の付き合いもあるはずです。体調を崩して寝こむ日だってあるかもしれません。
次の筆記試験までの間、勉強すべきことをすべてやろうとして、綿密な勉強計画を立てたとしても、達成できるとは限りません。筆記試験本番が近づくにつれ、勉強計画が達成できないことによる焦りや不安も増大するはずです。
綿密過ぎる勉強計画は、達成できないことで中途半端な準備で終わってしまい、再び試験に失敗するリスクが大きくなると言えます。
②対策本やネットの勉強法が自分に合うとは限らない
多くの人が、対策本・ネット記事・YouTubeなどを頼りに勉強していると思います。それらが勧める勉強方法は、多くの受験生に読んでもらい視聴してもらうために、不特定多数の受験生をターゲットにしがちです。
受験生は、それぞれ職場環境や生活環境が違いますし、暗記力やライティング能力も違います。書いて覚える人もいれば、聞いて覚える人もいます。受験生の勉強する環境も能力も多種多様です。対策本・ネット記事・YouTubeが勧める勉強法が、自分のスタイルにハマれば上手くいくでしょうけど、そうではない人もたくさんいるはずです。
対策本・ネット記事・YouTubeしか頼るものがないのかもしれません。でも、それらが勧める勉強法は、あなたにとって必ずしも有効とは限らないのです。自分に合わないものを無理して実践するのは、逆効果になることもあります。
③インプットからアウトプットの順番を逆にしてみる
キーワードの知識を詰め込むインプット学習を先行して、答案用紙に書きだすアウトプット学習を後で行う人は多いと思います。
しかし、実業務では、キーワードを覚えてから問題を解決することはできません。通常は、問題を明らかにしてから、解決に必要なキーワードについて、ネットや文献で調べるはずです。技術士の受験対策も同じで、想定されるテーマの問題解決プロセスを考えるのが先で、そこに必要な知識・キーワードは後から調べるのが実践的な方法です。
仮にキーワードを300個覚えるとなると、1日1個のペースでは10カ月かかってしまいます。これでは、インプット学習だけで時間不足になり、答案用紙への書き出しがぶっつけ本番になりかねません。もし、インプット学習を先行して不合格を繰り返しているなら、インプット学習とアウトプット学習の順番を逆にしてみるべきです。
④どんなテーマにも使える解答パターンは意味が無い
試験問題の出題テーマは毎年変わるにせよ、各設問で問われる内容は毎年ほぼ同じです。そのため、どんなテーマでも使える解答パターンを作っておけば、答案用紙を埋めることができると考える人は多いでしょう。
しかし、その方法で答案用紙を埋めたとしても、その解答が出題テーマに対して、合理的かつ論理的な問題解決プロセスとなっているとは限りません。
解答パターンを事前に準備することは、試験官も容易に想像がつきます。ロジックがおかしい答案を見た試験官は、事前に準備していた解答パターンに無理やりはめ込んだのだろうと思うはずです。そして、その答案に合格点を付けることは無いと思います。
どんなテーマが出題されても使える万能な解答パターンは存在しないので、それを準備することに時間を費やすのは無駄と考えるべきです。
⑤解決策の書き易さで想定テーマを絞らない方が良い
出題テーマを想定して模擬答案を作成し、ほぼ丸暗記して試験に臨む人は多いと思います。全ての想定テーマの模擬答案を作成する時間がない人は、ある程度テーマを絞って作成するしかありません。
模擬答案の作成では、試験官にアピールできそうなキーワードを書き込もうとします。キーワードを白書や審議会資料から見つけようとすると、どうしても解決策のキーワードが中心になります。解決策中心のキーワードがある程度集まると、それらを使いやすいテーマの模擬答案を作成するようになります。こうして、限られた時間の中で、解決策が書き易い想定テーマに絞られていくのだと思います。
必須科目Ⅰや選択科目Ⅲは、現時点で明白な解決策が無い複合的な問題の解決プロセスが問われています。これに対して、現時点で国が決めた解決策を中心に書いた答案では、良い結果を得ることは難しくなります。
⑥添削やAIへの過度な依存は解答能力を低下させる
受験対策として有料添削やAIツールを利用している人は多いでしょう。そして多くの人が、添削結果やAIの回答に従えばA判定答案が書けるようになると考えているかもしれません。
しかし、受験対策の本来の目的は、自分の力で解答する能力を向上させることです。添削やAIに過度に依存すると、「とりあえず添削に出す」「とりあえずAIに質問する」といった事務的な作業にすり替わってしまう可能性があります。さらに依存が進むと、A判定答案が書けない原因を「添削者が悪い」「AIの性能が劣る」といった外部の要因に求め、受験対策の本質を見誤る人が出てきます。
合格に必要な解答能力とは、どんな出題テーマに対しても論理的かつ合理的な解答を導き出す「発想力」と、解答趣旨を正確に伝える「文章力」です。有料添削やAIツールは補助的な手段として活用すべきであり、それらへの過度な依存は、むしろ受験生自身の解答能力を低下させるリスクがあります。
⑦発想スイッチを持っていれば悩む時間を短くできる
想定外のテーマが出題されると、どうしても悩む時間が長くなります。時間が足りないことが、不合格原因だと考える人も多いと思います。
設問ごとに何を解答するか考える時間を短くするには、設問ごとで使う発想スイッチをあらかじめ持っているのが効果的です。発想スイッチとは、解答を論理的かつ合理的に導き出すための「思考のきっかけ」です。
例えば、必須科目Ⅰや選択科目Ⅲであれば、「課題抽出は前文のキーワード」「最重要課題選定は公衆利益への影響度」「解決策提示はリスク最小化」「新リスクは有効性の低下」が発想スイッチになり得ます。選択科目Ⅱ-2であれば、「調査検討項目は不確定条件」「遂行手順は業務フロー」「関係者調整はリスク共有」が発想スイッチになり得ます。
このように発想スイッチを持っていれば、想定外のテーマが出題されても、試験会場で悩む時間を短くすることができます。
おわりに
筆記試験で不合格になった人は、まだ脱力状態かもしれません。でも、なるべく早くモチベーションを回復することが重要です。モチベーションの回復が早い人と遅い人、どちらが合格に近いかは明らかなはずです。
受験勉強を続けることは、苦しいかもしれません。でも、簡単に諦めないでください。諦めた時点で、あなたは絶対に技術士になれません。社会のため、未来のために技術士として働く、その気持ちを失わなければ、必ず合格する日が来るはずです。
