建設部門必須科目Ⅰについて、過去5年間の出題傾向を分析し、その結果からR8年度の出題テーマを想定していきます。
過去5年間の前文と出題テーマ分析
下記の表は、過去5年間で出題された必須科目Ⅰの過去10問について、社会情勢、社会ニーズ、出題テーマを一覧にしたものです。
社会情勢では、社会経済の変化、地球環境の変化、自然災害、インフラ老朽化など、現代社会にとって不都合な状況が示されます。社会ニーズでは、各問題で言い回しは違いますが、いずれも持続可能な社会構築を挙げています。出題テーマは、ニーズを達成するために、建設部門が実現すべき目標です。
つまり、必須科目Ⅰは、前文で現代社会にとって不都合な状況と持続可能な社会構築へのニーズを示し、設問(1)でニーズ達成に向けて建設部門が実現すべき目標(テーマ)を示す構成で出題されています。
過去5年間の出題テーマと関連政策分析
次表は、過去5年間(10問)の出題テーマを6つに分類し、出題テーマに関連する国土交通政策を整理したものです。
これによると、いずれの問題も、前年度に公表・改正・最終年を迎えた国土交通政策を背景として出題テーマが設定されていることがわかります。
また、同じテーマ分類でも出題テーマは年度ごとに異なっており、過去問と同じテーマの出題はありません。ですから、出題テーマの背景にある国土交通政策も全て異なっているということです。社会資本整備重点計画のような基本計画については、改正年度ではなく、最終年度で出題されています。
R7年度に公表・改正された主な国土交通政策
次表は、出題テーマ分類ごとに前年度(R7年度)に公表・改正された主な国土交通政策をピックアップしたものです。
第6次社会資本整備重点計画は大きな政策転換ですが、国交省が改正のポイントとして挙げている「持続的な地域社会の形成」「インフラ老朽化対策」「社会資本整備を支える基盤の強化」については、それぞれ出題済み(R6Ⅰ-1・R7Ⅰ-2、R5Ⅰ-2、R7Ⅰ-1)です。
したがって、R8年度にこれらに関連するテーマが出題される可能性は低いと考えます。また、インフラ分野のDX化についても、出題済み(R4Ⅰ-1・R6Ⅰ-2、)ですから、R8年度の出題は無いと思います。
R8年度の建設部門必須科目の出題テーマ想定
過去5年間の出題テーマと関連政策とR7年度に公表・改正された主な国土交通政策を分析すると、R8建設部門必須科目の出題テーマは以下の2つが想定されます。
想定テーマ1:グリーンインフラの活用
グリーン社会に関するテーマは、環境行動計画改正前後で出題されています。前回のR3改正ではカーボンニュートラル・脱炭素社会の実現が柱となっており、翌年のR4Ⅰ-2で関連テーマが出題されています。
今回のR7環境行動計画改正では、近年のNbSやネイチャーポジティブの機運増大を背景に、グリーンインフラの拡大が重点的取組みの2番目に位置付けられています。特にNbSは、G7札幌環境大臣会合(R5)やその後の国際会議で重要性が強調され、世界各国で取組み推進が始まっており、日本も積極的に進めることが求められています。
また、第6次社会資本整備重点計画でも、グリーン社会の実現に向けて、グリーンインフラの実装が中期目標に掲げられています。加えて、第1次国土強靱化実施中期計画でも、防災インフラ整備におけるグリーンインフラの活用推進が示されています。
想定テーマ2:複合災害への対応強化
自然災害対応に関するテーマは、R3Ⅰ-2で風水害対応、R5Ⅰ-1で地震災害対応が出題されています。このように過去問では、風水害や地震災害などの単発災害対応がテーマになっていました。しかし、R6能登半島で発生した複合災害(地震+豪雨)の教訓を踏まえ、R7年度に国土交通政策の多くが改正されています。
第1次国土強靱化実施中期計画では、複合災害の発生も含めたリスクシナリオを設定した上で、国土強靱化地域計画の具体化を図ることが示されています。第6次社会資本整備重点計画でも、同時あるいは時間差で発生する複合災害への備えを強化することが示されています。
また、R7年度には南海トラフ巨大地震対策計画第4版や災害に強い首都「東京」形成ビジョン改定案が公表され、複合災害への対応策が追加されています。
必須科目Ⅰの設問構成と解答条件について
必須科目Ⅰの設問構成は、社会情勢と社会ニーズを示した前文と(1)~(4)の4設問で変わらないと思います。
設問(1)では、多面的な観点から技術課題を3つ抽出すること、観点を先に述べてから技術課題を示すことの解答条件が与えられるはずです。抽出する技術課題について、昨年度は「構造上・制度上・管理上の課題も含まれる」という条件が付けられ、今年も同様の条件が付く可能性があります。
設問(2)では、抽出した3課題から最も重要と考える技術課題を1つ挙げ、その課題への複数の解決策を複数示すことが問われます。これまでは、解決策の提示数は指定されていませんが、3つの解決策を挙げるよう指定される可能性は否定できません。
設問(3)では、解決策を実行して新たに生じうるリスクへの対策が問われます。昨年は、解決策を実行して期待される波及効果と懸念事項への対応策を問うパターンが復活しましたが、期待される波及効果は出題テーマの実現であり、懸念事項は負の波及効果から派生するリスクなので、どちらも同じことです。
設問(4)では、これまで設問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり、技術者としての倫理、社会の持続性の観点から必要となる要件が問われてきました。ただし、今年度は改訂コンピテンシーが適用されることから、これまでの「社会の持続性の観点」が「持続可能な社会の達成に向け」などの表記に変更される可能性が高いと思います。そのため、自然環境の保全のみならず、持続可能な社会の達成についての解答が要求されそうです。



